ヴラドの奮闘日記

現代日本に蘇ったドラキュラ【ヴラド・ツェペシュ】が、時代とのギャップや人間関係に日々悩みながらも奮闘する姿を、自ら書き下ろしたノンフィクション?ブログです。
このブログは昨年 http://hp.cafesta.com/hikaruhosizoraで書き下ろしたものを、取り纏めて公開しています。

第14夜 【田中一郎の野望編】

2005-09-17
「どうですか、ヴラドさん。この広大な夜景を手に入れたいとは思いませんか?日本のウォール街と言われるこの街で、そしてこのオフィスで、ビジネスと経済を牛耳ってみたいとは思いませんか?…この私と一緒に。」

田中一郎総帥は先ほどの笑顔とは打って変わり、厳しくも精悍な顔つきで窓の下に広がる夜景を眺めながら言った。

「ひとつ聞いたいのだが、貴方は何故そこまで私に執着するのです? 私が貴方のグループ企業の中でも、更に末端の一飲食店であるキャバクラでキャッチの仕事をしている身である事はご存知のはず。」

総帥は私の方を振り返り、再び屈託の無い笑顔を私に向けた。

そして、傍らで話のやり取りを聞いていた秘書に対して、席を外すよう目配せをした。

(うーん…。…ピンチ)

「はは…。言っておきますが、私はそちらの気はないですよ。 ヴラドさん。」

(・・・読まれてる)

「私は先日、あなたの能力を目の当りにして最初は信じられなかった。ですから、徹底的にあなたの事を調べさせて貰いました」

「私の事を調べたのか?」

「驚きましたよ。 調べれば調べるほど、謎が謎を呼ぶとはこう言う事を言うのですね」

(謎が謎…。私は安物のサスペンスドラマか?」

「最初私は、あなたがただの変人じゃないかと疑った事もありました」

(変人!?…生まれて初めて言われたぞ)

「先ず、家です。 道らしい道も無く、高台に聳えるまるで中世の城のような家…いや、館かな?調査報告を見ると、広大な敷地はどのような侵入者をも拒める程の高く切り立った石積みの塀で囲まれ、その周りには堀が施され跳ね橋が掛けられているとの事。 橋を渡ると大きな門がある…城門というべきですかな?」

(何故だ?普段は人間に見えないように細工してあるのに…)

「登記簿を調べても建物の登記はなされていないし、土地の所有者はルーマニア人で既に50年も前に亡くなっている。 普通なら相続人の無い不動産は最終的には国庫に帰属されるはずだがそれもなされていない。 まぁ、物権法上、長期不動産の占有という事で登記はされていなくても、土地建物はあなたの所有物と言っても間違いはないようですが…」

(何を言っている。 あの土地と建物は私の下僕でもあったラディロ・パティル氏より譲渡されたものだぞ!…しかし、登記ってなんだ?)

「さすがに敷地の中へは入れなかったみたいですが、ある情報が耳に入りまして館の中の状況を知る事が出来ました」

「ある情報?」

「そう、以前ヴラドさんはパソコンを購入し、NTTによる電話回線工事をしましたね。 その時の配線工事会社は私の配下の関連会社でした」

(あっ!ブラムに追い払われて逃げ帰ったあの2人か…)※第4章参照

「その時配線工事を担当した者から怪奇な…ゴホッ、失礼。 斬新な中世を思わせるデザインのインテリアや不思議な館の構造、果てはおぞましい…失礼、可愛いペット達の話を余すことなく聞き出す事が出来ました」

「うむむ…」

「ここまでなら、普通の人間はあなたの事をただの変人…ゴホッ、失礼。 少々趣味の変わった人くらいに思ったかも知れませんが、私は違う。 益々あなたに興味が湧いてきた」

(だから、どうして…)

「私には心当たりがありました。 色々な文献を読み漁り、勿論インターネットを駆使して世界中の情報を集めました」

(総帥ともなると、よっぽど暇なんだな…)

「そして、あなたのあの赤く光る瞳…人の心を操るあの力…私と同じ能力を持つあなたが何者かを突き止めましたよ」

「…何だと!?同じ能力だと?」

「そう、私もあなたと同じ能力を持つバンパイアの仲間…ただし、あなたほど由緒正しくはありませんがね」

「何者だ?お前は?」

「それはまだ答えられませんよ。 ただ、私とあなたが組む事によりこの世界は私たちの物になるのは間違いない。 これは、断言できる」

「なんだと…」

「わたしはあなたより10年早く現代に転生して来ました。 そして、この力を駆使して今の地位まで登り詰めました。 その為に犠牲になって貰った人間は数知れませんがね」

田中一郎は先ほどの爽やかな笑顔とは違い、不気味な笑みを浮かべていた。

「この力を登り詰める為だけに使ってきたのか?」

「当然でしょ。 何のために使うんですか?世界を手に入れる為に備わった力ではないですか。 あなたもそのつもりでこの前は力を使ったんでしょう?」

(後悔先に立たずとはこの事か…)※第11章参照
田中一郎は再び窓から夜景を眺め始めた。

「本当は私ひとりで世界を手に入れるつもりでした。 だが、あなたが出現した。 私は悩みましたよ。だが、結論を出した。世界の半分はあなたにあげましょう。 私がこれまで10年の歳月をかけて築いてきた物を、あなたは労せずに手にしたのですよ」

「・・・・」

「だから、このペンタハウスの半分をあなたのプライベートオフィスにした。 残り半分はわたしのオフィスだ。どうです? 悪い話ではないでしょ。 悪い話どころか良すぎる話だ。 ただし…」

「ただし?」

「私がこれからしようとする事に従って貰います」

「しようとする事とはなんだ?」

「それは、あなたとでなければ出来ない事なんですよ。 …ルーマニアを発信地に世界へ名を轟かせた串刺し公、ヴラド・ツェペシュ伯爵。 いや、ドラキュラ伯爵と言った方がお似合いかな?」
振り向いた総帥の瞳は赤く光っていた…
Posted by blueberry at 17:41:03 │Comments(0)TrackBack(0)

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