何しろ、一流の女性ばかりだから…。
勧誘した私の責任もあるから、彼女達が困るような事にならないよう、気をつけてあげなければならない。
私の教育係の山田マネージャーは今日も、いつものようにキャッチの仕事へと出かけて行った。
何故か私は店長の清水氏に呼び止められ、店に残るように言われている。
(私は何か仕出かしてしまったのだろうか?)
先日、キャッチ中にオカマのお兄さんに(お姉さん?)声を掛けてしまい、危うく2丁目に連れて行かれそうになった時も、例のオカマさんがあの後ダイアンに飲みに来て、私を出せとひと悶着あったとの事で店長に小言を頂いたばかりである。
その時はさすがに代表は苦笑いしていただけだったが、今日はその代表が話があるとの事だった。
さすがの私も「少々ブルー」と言う、人間の気持ちが分かる気がした。
そうこうしている内に、エレベーターが開き、代表が汗を掻きながら入ってきた。
「悪い悪い!ヴラドさん、遅くなっちゃって」
「あ、おはようございます。代表」
上司に対する言葉遣いも最近は様になってきた。
「ちょっと、人を待たしてるんで外に出ようか」
「え、外にですか?」
何事であろうか。
代表と私は、エレベーターに乗り1階へと降りた。
何か緊張している様子の代表は汗を掻き掻き早足で歩いた。
(どうしたんだ?この人は…まぁ、普段から挙動不審ではあるが)
そのまま代表に着いて歩いて行き、店から4〜50m程ある国道へと出た。
「ヴラドさん。乗って下さい」
「えっ?乗るって何に?」
「その車ですよ」
客待ちのタクシーや、駐車中の車の車に被せるように黒塗りのリムジンが停まっており、運転手らしき帽子を被った男がドアを開けこちらを向き会釈した。
私は代表に背中を押されるように、リムジンの最後尾の座席に乗り込んだ。
何故か代表が乗らないまま、車のドアは閉められた。
代表は窓の外で何故か深々とお辞儀をしている。
スモークを貼っているせいで車内は薄暗いが、対面となっているシートの向こうで人影が動いた。
「ヴラドさんだね?」
「いかにもそうだが…」
「突然で驚いたとは思うが、少し時間をくれますか」
「どう言うことかな…」
男はおもむろに名刺を差し出した。
【TIグループ総帥 株式会社GLOBAL NETWORK ENTERPRISE 代表取締役会長 田中一郎】
TIグループ総帥…。
この男が私の働いてる店のグループの総帥なのか。
…田中一郎?
…どこかで聞いたことがある。
(はて?何処だったっけ?)
「私はあなたが働いている店のオーナーで田中一郎です。ビル名にもなってるんで名前には聞き覚えがあると思う」
あ!そうか。
ダイアンの入ってるビルが第五田中一郎ビルだった…。
「あなたの評判は聞いてますよ。活躍されているようで」
「評判…ですか?」
「そして、大変な能力を持っていらっしゃる。赤い瞳の…力」
「何故それを…」
私の秘密の力は山田マネージャーにしか見せていないし、その山田マネージャーも気がついてはいなかった筈だ。
「私は見ていたのですよ。あなたがグループの新記録を大幅に塗り替えたあの日…。」
「……。」
「たまたま、私のグループの不動産会社である 絵LOBAL ESTATE JAPANの会議に出席した後、ビルの前でたまたま貴方が女性に声を掛けているところを見て、暫らく観察させて頂いた」
「……。」
「私は見たのだよ。あなたの目が、瞳が赤く光るの
を」
「…見間違いでは…ないのか?」
「見間違うわけがないだろう!…私が」
薄暗い車内の中でその男の目が、赤く光った…。
第13夜 【新 転 地 編】をお楽しみに♪
