ドラキュラとしての、封印しているいくつかの能力が…。
現代の領主になる為には、いずれか使わざるを得ないとは思っていた。
少々早い気もするが、プライドに火をつけられたら致し方ない。
山田マネージャーのような人間にも、このような能力があるのなら私も負けてはいられない。
「マネージャー、今度は私がやってみるとしよう」
「えっ?もう少し、私のやりかたをを見てからの方がいいような気もしますが、…そうですね。場数を踏んだほうが覚えますからね。じゃ、私がフォローしますからやってみましょう」
暫らく人の流れを見ていたが、横断歩道を渡ってくるceleblityな若い女性に狙いをつけた。
「あの女性にしよう」
「ちょ、ちょっと待って下さい。ヴラドさん。あれは、だめですよ」
「ん?何故だ」
「確かに綺麗な娘だし、店に入れば1ヶ月もしないうちに容姿だけでもNo.1になれるでしょうが、レベルが高すぎる。どこかの令嬢でしょう。水商売は絶対やらないし、お金にも困ってない。僕の経験から言わせて貰うと…あれ?…ヴラドさん?ちょ、ちょっとブラドさん!」
山田マネージャーの話を遮り、彼女に向かって進んだ。
彼女が横断歩道を渡りきったところで声を掛けた。
普段、私の目は海のように深いブルーだが、彼女に声を掛ける瞬間、それは深く赤い鮮明な『血』の色に変化し、そして光った…。
「Bună ziua!…Încântat de cunoştinţă.」
一瞬、彼女と目が合った。
彼女はこう言う事に慣れているのだろう、またかと言う風に一瞥しただけでそのまま通り過ぎようとした。
山田マネージャーがほら見たことかと、ほくそえんだ。
その瞬間…。
彼女が立ち止まった。
「……」
そして、ゆっくり振り向いた。
「…はい。…こんにちは」
彼女の瞳は既に潤み、憂いに満ちていた。
「…なんなりとお申し付け下さい。伯爵様…」
私の瞳には物を見ると言う以外に、獲物を捕らえる
『食指』としての機能がある。
私の赤い瞳を見たものは、私の全てを理解し、そして生血を捧げたくなる。
生血を啜れば、永遠に私の下僕として仕える事になる。
現代に転生してからは、生血を吸う事を封印しているのでそれはしないが、それでもある程度の従束力はある。
余談だが、この力は一般的に若く美しい女性に対してしか使えない、等と間違った情報が伝えられているようだがそうではない。
人間であれば、誰に対しても使える。
男性であろうが、お年寄りであろうが…。
ただ、あまり使いたくないだけである。
「私の可愛い僕よ。今後は私が願う事をを忠実に守りなさい。…出来る範囲でいいから」
あまり、彼女の人生を狂わせてはならないので、最小限に留めておこう。
この後のやりとりは、山田マネージャーの悪夢でも見ているかの表情で分かって貰えよう。
…目は皿のように丸く、あごは引力に逆らえず落ちていた。
「では、明日!」
「じゃーね。ヴラちゃん!」
明日の面接を取り付け、彼女とは別れた。
その後も、尻尾を振る犬のように着いて来る山田マネージャーを従え、21人の面接予定を取り付けた。
…これは、後で聞いたがTIグループの過去最高記録だったらしい。
ここまでの一部始終を、ビルの陰からずっと見ていたひとりの男がいた。
「とうとう、見つけたぞ…」
次回、第12章(田中一郎編)をお楽しみに♪
