ヴラドの奮闘日記

現代日本に蘇ったドラキュラ【ヴラド・ツェペシュ】が、時代とのギャップや人間関係に日々悩みながらも奮闘する姿を、自ら書き下ろしたノンフィクション?ブログです。

第7夜 【祝 就 職 編】

2005-09-17
「えーっと、ブラド、ツエペス君‥‥で、いいのかな?」

あの後、昔の恋人のエルジェベットに良く似た女性(名前はゆきと言うらしい)の取り計らいもあり、事無きを得た私はエレベータ横のカウンターで代表と呼ばれる男の面接を受けている。

「ヴラドだ。…こうやって、下唇を噛んで、ヴ・ヴ・ヴラド。そして歯の裏に下を当てて、ツェ・ツェ・ツェぺシュ」

「…ブ・ブ・ヴラド、ツエ・ツエ・ツェぺシュ…」

「よろしい」

「…う…ん…」

何故、この男は顔を赤くしているのだ?

「うん、まぁいいでしょう。 言葉が多少威圧的なのは気になるが、外国の人だから仕方ないし、それもまた個性という事で」

「そうか、それはよかった」

「…。 で、明日から来れますか?」

「いつからでもいいぞ」

「……」

また、顔が赤くなった。

変わった男だ。

「それじゃ、仕事内容について詳しくは彼に教わってくれますか」

代表が手招きをして、先ほど私をエレベーターで案内してくれた黒服を呼んだ。

「彼は、山田君。 この店のマネージャーです」

ほほぉ、マネージャーと言えばえらいのだろう。

それにしては、若い。22〜3歳だろうか。

「山田君、明日からキャッチをして貰うブラド…失礼。 ヴ・ヴラド君だ。仕事をよく教えてやってくれ」

「はい。 あ、さっきはどうも。山田です。よろしく」

「ヴラドだ。 よろしく頼む」

この後、暫く山田マナージャーから仕事の説明を受け、店を後にした。

帰るとき、ゆきが小さく手を振りながら笑っていた…。

まだ、時間も早いので数日振りにマスターの店に顔を出すことにした。

「おや、伯爵! 珍しいですね。 こんな時間に」

「うん、実はちょっと仕事を決めてきた」

マスターは洗い物の手を止めて、驚いたように私を見た。

「えっ、仕事ですか? 伯爵が?」

「そうだ。 色々と物入りでな」

「そうですか…。 私がパソコンなんか勧めたばっかりに」

「いやいや、そうではない。 パソコンは大変役に立っている。 人間社会の仕組みがよく分かる」

「ここの一本北の通りの、『ダイアン』と言う店だ」

「えっ、あの田中一郎ビルの4階の…」

「知ってるのか」

「いえいえ…。 しかしあの店はキャバクラですよ。 伯爵は何の仕事をするんですか」

「キャッチとか言ってたな」

「キャッチですか? 伯爵が。 …大丈夫かなぁ。 他に仕事なかったんですか?」

「いや、いいんだ。 ゆきもいることだし…」

「え? ゆきって?」

「いや、何でもない…」

なんとなく芋焼酎がいつもより甘酸っぱくも感じた。

店の代表ではないが、少し自分の顔が赤くなってるような気がした。

この日はマスターからの就職祝いという事で、遅くまでグラスを傾けていた。

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