悲鳴をあげる2人の顔面は蒼白、恐怖に慄きながらも転がるようにドラキュラ館から飛び出していった。
「…やれやれ、もう少しで人間社会との確執を持ってしまうところだった」
ヴラドは棺から顔を出し、柱の横の黒い影に向かって、
「プラム、よく来てくれたな。お陰で助かったぞ」
そこには誇らしげに尻尾を立てた黒豹『ウィキ』の子、『プラム』が母親そっくりの光沢のある毛を、柱に摺り寄せるように立っていた。
抜けた腰を手で押さえながら、館から飛び出した配線工事の2人は、車に乗り込み発進させた後、暫くは放心状態であった。
「………」
「………」
「…おい、今の‥猫じゃないよな」
「…犬でもないですよね」
「まさか、虎じゃないよな」
「虎は黒くはないですよね」
「じゃ、やっぱり猫か?‥黒猫」
「黒猫にしては、やけに大きすぎませんか」
「………」
「…どうします?警察に届けますか」
「いや‥やめとこう。もしかしたらやっぱり大きな
猫なのかもしれないし、警察なんかに届けたら、俺たちがしようとしていたことが問題になるかも知れんぞ」
「そうですよね。あの箱の蓋も少し開けてきちゃったままだし、まずいっすよね」
「もし、何か猛獣だったとしても、きっと許可を取って飼ってるんだろ。」
「そう言えば、鎖を着けていたような気がしますよ。」
「だろー?そうだよ。うん。…恥かしいから皆には黙っていような。」
「ですよねー。あー、なんかよく考えると馬鹿みたいですよねぇ」
馬鹿な2人は、大笑いしながら館から猛スピードで遠ざかって行くのであった。
その頃、事なきを得たヴラドは、何事もかったように、パソコンに開通したばかりの電話線を接続するのに夢中であった。
説明書を見ながら、眼をキラキラさせながら取り組む姿は、玩具を買って貰った子供そのものである。
何れにしてもヴラドは、現代の領主になる為の、インターネット攻略作戦を、艱難辛苦の末、やっとの事でスタートしたのであった。
