「ちょっと、お尋ねしたい事があるので少しお時間いいですか」
そう言えば、さっきからサイレンの音がけたたましく鳴り響いていたのを思い出した。
「何事か起こったのか?」
警察官は私を物珍しげに観察した後、
「いえいえ、実は先ほどこの先の路地でちょっとした事件がありまして…」
「事件とは?」
「通り魔なんですよ。若い女性が2人で歩いてたら、いきなり首筋を何かでで切りつけられたようで…」
…バルとべジルだ。
「大した事はないみたいなんですけど、犯人の人相も何も覚えてないようで、今目撃者を探してるんですが、何か見たとか聞いたとか心当たりはないですか」
「いや、私は今そこのパソコンショップで買い物をしていたので…」
「あぁ、そうですか。それは失礼しました。とにか
くそんな訳で、夜道は物騒ですから、お気をつけてお帰り下さい」
「うむ…ありがとう…」
警官は軽く敬礼をして、去っていった。
(参ったな、この国では食事をするのも結構大変そうだ。下僕たちには暫く人間以外の生血で辛抱して貰うしかないな…)
急に足取りも重くなり、行く末が不安になってきた。
「今日も、マスターに愚痴を聞いて貰おう」
などと、独り言を言いながらネオンの街へ踵を返したのであった。
